佐藤愛子の作品は、長編小説「血脈」しか読んだことがない。北杜夫の随筆の中にちょくちょく登場して文壇仲間から怒りの愛子ちゃんと呼ばれているらしいことだけは、存知上げている。タイトルだけでこれは面白そうだと思って購入した。しかも愛子さんがそんなものわけが判らないと仰りそうな電子書籍だ。簡潔で読みやすくユーモアを交えた文章はさすがだと思う。ただの高齢ばあさん(失礼)の小言集ではない。新聞の人生相談への投稿欄に纏る話が多くご本人は、「人生相談回答者失格」とおっしゃっているけれども各相談に対する感想や意見は、妙に気遣ったものでなく率直な意見としていいと思った。しかたなく飼うことになってしまった犬のハナのことを書いた「グチャグチャ飯」など心に残る。「子供に頭痛と自殺はない」と言われていた時代を生きて来て、現代の子供たちを取り巻く環境に憤りを覚え悲しまれている。どうしてこんなことになってしまった。不寛容になってしまった今の日本人社会の現状を嘆いておられる。読めばいろいろと共感できるものがあるのではないだろうか。最終章にあったけれども作品を考えたり書いたり締め切りに追われるような生活から開放されたいと願い、いざそうしてみると張り合いがなくそのまま鬱になってしまいそうだったと書いておられた。いろいろな怒りを書くことは生きる活力のようだ。生涯現役いいですね。ということでみなさんにお薦めの一冊です。
ところで些細なことだけれども九十歳は「きゅうじっさい」と読む。
https://www.shogakukan.co.jp/books/09396537
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