第156回直木賞受賞作の「蜂蜜と遠雷」電子書籍で購入し読了。恩田陸の作品初めて読みました。結構な長編でしたけどぐいぐい物語に引き込まれてしまい一気に読んでしまいました。全編かなりハイレベルと思われる国際的なピアノコンクールの話です。その結果次第で今後の人生が左右されてしまうみたいなレベルらしいです。私は、クラッシック音楽のことはほぼ無知ですが、各国のオーディションで選ばれた若いピアニスト(コンテストタント)たちがコンクール入賞を目指してそれぞれが競い演奏している様と音楽を言葉だけで描写されているというとこがすごいところだと思います。それにそれぞれのコンテスタントのそこに至るまでの背景描写も面白い。モデルになったピアニストがいらっしゃるのでしょうか。読んでいるとピアノの音が聞こえているかのような感覚になります。ということでこの物語の主軸となった各演奏者のピアノ音楽を実際に聴いてみたくなるそんな作品でした。
コンテスタントばかりの話ではなく、審査する立場からの話もあり審査することの難しさの葛藤描写も興味深いものがありました。あまり深い描写は、ありませんでしたがピアノ調律師や会場運営をする人たち、コンテスタントの恩師や友人関係の描写がとても重要な脇役として描かれています。こんなに多くの人たちが僅か数人しか選ばれないコンテストタントのために動いているという見逃しそうな部分の描写がコンクール会場の空気感となり読む者に伝わってくるように感じられました。中でも蜜蜂王子の希望どおりにピアノを調律するあの調律師の人もしかして「羊と鋼の森」の人かなとか思ったり気になるなあ。
話の展開は、まあそうだろうなと自分が期待している範疇の展開になっていて安心感があります。作者が読者の期待を裏切って、読者はそれに快感を覚えるようなSMプレイ的なものは件の小説にはなんの意味も無いと思われます。さて、小説中の若きピアニストたちはこの後どう活躍するのでしょうか。特に蜜蜂王子、もしかしてちがう世界の大家になっているかも。そんなことが気になってきました。映像化なりそう。
恩田陸なんか覚えがあるぞと思っていたら、ある長編小説を電子書籍で買ったままずっと未読でした。読んでみないとです。
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